三原順の事 まずはDDの事など。

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ツイッター三原順の事をつぶやこうとしたらどうにもおさまらないので久方ぶりにブログを開いてみました。

レビューとかではないので読んでない人はわけわからん内容になると思うけど申し訳ないです。

 

三原順は大好きで自分にとって大切な作家です。

物凄く面白い・・・がものすごく難しい。

上の「XDay」にしてもカウンセリングの扱いとかちょっとなと思う所もある。

大体、三原順の生み出した作品というのは「大賛成」とか言うと

「お前、そんなこと言って大丈夫か??」と後ろからガツンと殴られるような怖さに満ち満ちている。

なんというか自分の駄目な所やずるい所、汚い所を目の前に並べられるような部分もある。

どうしてそんな作品群を読み続けているのかと言われると一言でいうと難しいし、色々あるんだけど一つには「DD」というキャラクターに出会ってしまったからというのがある。

「DD」というのは「ダドリー」と言って「XDsy」や「Sond」「ムーン・ライティング」の主人公です。

「XDsy」や「Sond」「ムーン・ライティング」のDDはちょっと別次元の人物なんだが体験的な部分で重なっているはずで、彼は幼い時に産みの母に殺されかけています。

この体験は自分に重なる部分なんだけど、重なるだけに彼の作品でのDDの考える事、行動は個人的に自分の事のように迫ってくる部分があります。

例えば「Sons」で親友のトマスが祖父を亡くした夜一緒に過ごすというシーンがあるのだがDDは彼とオセロをしながら、まるで普段通りにオセロをしながら機械的に涙を流し続けるトマスにたいして

「トマスは笑う 笑い乍ら涙を流し続ける そしてオレは祈り続ける

 どうか泣き叫びださないでいてくれ

 どうか喚き始めないでくれ

中略

 オレは怖いんだ。

 爆発した感情を受け止めてやる役など

 オレは苦手なんだ

中略

 オレはもう

 あんなものは受け止めたくない

後略」

と心の中で思う。というか、切実に祈り続ける。

トマスに対して同情心なりかわいそうという気持ちがないわけではないけれどそれ以上に自分の事がきになってしまう。

これを読んで冷たい、ひどいという人もいるかもしれない。

ただ、自分は実感として「こうなるだろうなぁ。」と思ってしまう。

こう体験が傷になってまっとうではいられなくなる現実が痛いほど出ている。

「Sons」ではDDがその「傷」によってできた欠陥にあちこちで向き合う事になります。

どこまでいっても自分だけが大事な自分を苦々しく思うシーンもあります。

DDの話は「Sons」も「XDay」も解離性障害、とくに解離性健忘、解離性の離人感については物凄くきちんと描きこまれている。

・・・三原順が作品を発表したころにはまだ一般的な話ではなかっただろうに、作家ってすごいなぁと思います。

「Sons」にしても「Xday」にしても話の中で色々なエピソードやメインのエピソードはあり終わるのだが、何か問題が解決するわけではありません。

というか問題をはらんだまま(ひどい時は新たな問題を)今日もまたすぎ、明日がやって来るのをとどめる術はない。

ただその中で「Sons」のDDは

あれは自分が生きたいとおもったが故の事毎の埋葬だった。

だからあの頃の自分がやってきたら「ようこそ」と言おう。」(大意)

と彼にしては腹をくくる。

そして「XDay」のDDは写真に上げたように

「やはりボク達は負け続けてしまうのです

 そしてボクはすっかりいい気分になってしまい・・・

 やはり飢えながらけれどすっかり幸福な人間になってしまったのです。」

そういう瞬間瞬間を確かに彼は体験する。

「飢えながらでも幸福でいい。」というのは

なんというかとても自分を安心させました。

解決しない問題もあるし、過去も変えられない。

取り戻せないものもあるし、決定的に手にない物もある。

それでもなお幸せでいい。という。

まぁ、自分勝手な解釈ですが自分はそう思う事で腹を括れて前に進めた部分があります。

 

三原順は人の汚い所、どうしようもない所もいやがおうに見せつけるのですが

こう、人の図太い、しぶとい、生き抜く力も描いていると自分は感じます。

汚い所やずるい所に目を背けずにその上で人のしぶとい所を描き出す部分に

尊敬を感じるというかそういう部分が美しいなぁと思います。

もっとみんな三原順をよむといいと思います。

 

あと、三原さんはとても音楽を感じる。

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アンジーなんかはシャンソンカンツォーネを。

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タンゴを

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ジャズを。

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ポップスを。

 

彼女の物語としては硬質な作品群を彼女の絵か感じさせる音楽が柔らかく空気のように物語を支える。

そういう空気感も大好きなのです。