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いい加減しつこいとも思いますので飛ばしたい方は飛ばしてください。 ネタバレだらけです。

読了。本屋で立ち読みして、購入してまた読む。
満足感 星5

内容
中々表ざたにならない性的被害者からの大切な1冊。この日本で警察に届け出たというんだからすごい。 とにかく沢山の人に知ってもらいたい現実が丁寧に描かれている。
性的被害の内容。被害の実情、その時の自分の心の動き。被害後の対応。警察への届け出。付き添ってくれた人の対応。警察での詳細。その後の記憶障害、PTSDの実情。カウンセリングの遍歴。その内容。その後の結婚、離婚。性的関係への不快感。就職、転職。自助グループへの参加と支援。どうやって生活してきたのか。丁寧に感情的にならず、事実をありのまま、真実を伝える事を第一の目的とし、描き出されています。静かなだけにその内容の重さに愕然とします。
かかわりを持った人たちの素晴らしさと小林さんの頑張りが本当にすごいです。(いや、すごいってだけでは追いつきませんが)
性的被害者のサバイバーである自分としては本当に頭の下がる1冊。小林さんの未来が明るいことを祈ります。

書評
どうだろう、日本の性的被害に対する認識は本当にレベルが低い。だいぶましになってきたとはいえ、警察に届け出る事がまず大変。しかも申告罪なので被害者が訴えないと加害者が捕まったり、裁かれたりすることはない。今は変わったが、加害者の人権保護の為、被害者に加害者情報(刑務所を出た等)が開示されない。また開示されるようになってもその処理が煩雑で中々開示されない。これによって訴えた被害者が加害者のお礼参りに怯える日々を送らなければならない。

強姦と認定されるのも「明らかな強姦」でなければならない。
命の危険があった。怪我をしている。見知らぬ人からの被害である。助けを求めた、挿入が確かにあった等々、ハードル高すぎ。
大体そんな強姦はそんなに存在しない。殆どが身近な人からの強姦だし、継続的なものも多い。

一般の認識もまだまだ甘い。被害者を汚れたものとして見る目、あといまだに「女はレイプされたがっている」という認識。(特に男性側から)
・・・・この認識は本当に苦い。一度同じ目にあってみろと言いたくなる。(男性の被害者も多いし、男性の被害者はさらに偏見と苦渋に満ちた道のりが待っている。)

PTSDもやはりすごい。記憶障害、離人感、人との関係の破壊。解離性障害。破壊行動への執着。

一度(またはいく度も)起こってしまった事は変えようがない。血のにじむような道のりでその「物語の書き換え」を行っていくしかない。
経験は変えられないが、その位置づけは変えることが出来る。
まぁ、自分もそうやって「物語の書き換え」を行っている最中だけど、これは中々大変だ。何といってもトラウマ的記憶、体験は中々過去にならず、書き換えようとするたびに「同じ体験」として自身を襲う。
記憶は飛ぶし、吐くし、食べ物はのどを通らなくなるし、強烈な自己破壊衝動、自己嫌悪、汚れているんだという実感が襲う。

しかし、癒えない傷なら抱えていくしかない。「治らない傷でも膿まないものもある。戦え」と言葉を発した漫画もあった。
全ての被害者に「戦え」という訳ではないが(それは誰も口を出せる権利はない。被害者自身がよくよく考えて自分の為に何をなるべきか選び取ることだ)自分自身は自分のできる範囲で戦いたいと思う。

そうだなぁ、訴訟に持ち込むのは正直できないが、たとえば自身のブログ、mixiで発信する事、書籍にして発表する事ぐらいはできると思う。自分の為にあと、全ての被害者の為にやりたいと思う。
よかったら応援よろしくお願いします。

余談になるが、訴訟で裁判員制度に不安がある。玄人の前で証言するのも大変なのに、素人の前で発言する被害者の事を思うと本当に心が痛む。すべての裁判員を信用しないという訳ではないが、良心だけではやっていけない部分がある。
ろくな教育も受けていない裁判員の前で発言、また質問に答えなければならない被害者にとって裁判はさらに過酷なものになっているんじゃなかろうか?
ただでさえデリケートな問題で、セカンドレイプの可能性がそこここに隠れている裁判で、発言する、または告発する事の環境が後退しているように思われてならない。できればクローズの裁判を希望したい。

読み取るべき点
まずはきちんと向き合って読んでほしい。

そして知ることが被害者支援の第一歩であることを認識してほしい。

誰もが加害者、被害者になる可能性があることを胸に刻んでほしい。

自分も自助グループに入るかなぁ。
ここまで読んでくださったかたありがとうございます。